2017年2月16日木曜日

王朝の美意識を今に伝える至宝が一堂に!「春日大社 千年の至宝」展をレポート


王朝の美意識を今に伝える至宝が一堂に!
「春日大社 千年の至宝」展をレポート



 東京国立博物館で開催中の「春日大社 千年の至宝」展。
 神社仏閣の宝物展というと少々地味なイメージが……しかし!今回の春日大社展、「国宝級お宝の見本市か!」というくらい豪華な展覧会になっています!
 そんな春日大社展のプレス内覧会に参加してまいりましたので、レポートいたします。


「天の原ふりさけ見れば春日なる 三笠の山に出でし月かも」
 百人一首でもおなじみ、唐に渡った安倍仲麻呂が日本への帰国を許された際、望郷の念を込めて歌ったとされる歌です。仲麻呂たち遣唐使は唐へ渡る前、三笠山を拝する春日大社で旅の無事を祈ったといわれています。

撮影:桑原英文
  奈良時代の初めに国の繁栄と国民の幸せを願って創建された春日大社。皇族、貴族たちは春日詣での度に最上の宝物を納めていきました。幾多の戦禍、災害の被害も受けず、納められた宝物で焼失したものはないといいます。春日大社では「式年造替」と呼ばれる社殿の建て替えや修繕が約20年に一度行われますが、平成28年には60回という大きな節目を迎えました。創建から現在に到るまで、人々の幸せを願う祈りの歴史がここに集積されています。

《鹿島立神影図》南北朝~室町時代/
14~15世紀/
春日大社蔵(通期展示)




 春日大社は奈良公園の側にありますが、奈良公園といえば鹿ですよね。
 あの鹿さんたち、神様を乗せて常陸国鹿島からやってきた神鹿の末裔なんだそうです。
 展覧会会場に入って最初の第1章で私たちを迎えてくれるのは、神鹿が登場する作品群。南北朝〜室町時代に制作された《鹿島立神影図》は、春日社第一殿の祭神・武甕槌命(たけみかづちのみこと)が神鹿に乗って春日の地へやってきたという伝承に基づいたもので、後小松天皇がご奉納されたと伝えられています。武甕槌命は天照大神の国譲りを成功させた大変御力の強い神様とのこと。神様のお姿は絵に描かれることが少ないので、ご尊顔がはっきり描かれたこの絵の前に立つとなんだか有難いような畏れ多いような。





国宝《金地螺鈿毛抜形太刀》平安時代・12世紀/
春日大社蔵  1/17(火)~2/19(日)まで
 第2章は「平安の正倉院」と称えられる春日大社の真骨頂を見ることができる展示となっており、平安時代に納められた武具・化粧道具・楽器などの神宝が並びます。神宝は神様にご使用いただく為に奉納された宝物のこと。たくさんの宝物の中でとりわけ目を引くのは、やはり国宝《金地螺鈿毛抜形太刀》(展示期間〜2月19日まで)。柄も鍔も鞘も金色に輝く美しい太刀です。科学的調査の結果、金具の多くが金無垢であったことがわかっています。鞘に螺鈿(らでん:貝殻の内側のキラキラしたところを使った技術)とガラスで施された猫と雀は宋画から着想を得たデザインとされているそう。
平安時代の我が国の工芸技術の高さには驚かされます。技術が伝承されておらず、現在では再現不可能なものもあるといいますから、じっくり鑑賞したいところです。

 続いての第3章では春日の神々への信仰をめぐる美的世界が展開されます。
 春日信仰が広まるなか、春日大社へ訪れずとも神々を拝することができるようにと製作された《春日宮曼荼羅》や、本地垂迹思想に基づき目に見えない神の姿を仏に仮託して表したもの等が生み出されました。春日社の神々の霊験を描いた《春日権現験記絵》は、日本の絵巻史上の最高傑作の一つと言われています。人々の表情が描き分けられている点など、細かいところを見ていくと飽きずに見ていられます。

 
《春日権現験記絵》(春日本)巻十二(部分)
江戸時代・文化4年(1807)
春日大社蔵・通期展示(場面替有)
第4章では奉納された鎧や刀といった武具、第5章では舞楽面など神々に捧げられた芸能に関するものが展示されています。
 刀剣の刃の輝きには思わずうっとり。
 かなりの存在感を放っていたのが舞楽に用いられている大きな太鼓!迫力がありました。
 

会場内風景 筆者撮影




獅子・狛犬 鎌倉時代・13世紀
            春日大社蔵 通期展示
 

 最後の章では、式年造替にまつわる資料と、役目を終えて撤下(てっか)された品々が紹介されています。
 年を経た瑠璃燈籠は、青いビーズを連ねて張られてあり、現役時代は火を灯すと美しかったのだろうなと想像できます。
 会場の出口付近、私たちを見送るように並ぶのは、本殿をお守りしてきた獅子・狛犬たち。角があるのが狛犬、ないのが獅子だそう。一体一体特徴がありユーモラスです。

展覧会の後にはミュージアムショップでお買い物をするのを楽しみにしている方も多いかと思います。今回、春日大社展オリジナルキャラクターを用いたグッズが充実しており、見ているだけでも楽しい。
 酒飲みの私の個人的なオススメは式年造替を記念して製造された奈良豊澤酒造の純米吟醸酒「造替」!普段は春日大社境内授与所で販売されていますが、今なら上野で手に入ります!春日大社には古くから酒殿があり、日本酒とゆかりが深いんだそう。山田錦を使用した「造替」はキレがあって飲みやすく、飲んだ後にお酒の甘い香りが鼻腔を満たしてくれます。大変美味しゅうございました。飲める方はお土産にどうぞ。


東京国立博物館の平成館は今、建物ごとお宝タイムカプセルと化しています。
ぜひこの機会に、素晴らしい日本の古の技術をご覧になってください!


開催概要
特別展「春日大社 千年の至宝」
会期:2017年1月17日(火)~3月12日(日)※会期中展示替えあり
会場:東京国立博物館 平成館(東京都台東区上野公園13−9)
開館時間: 9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日
料金:一般1,600円、大学生1,200円、高校生900円 ※中学生以下は無料
お問い合わせハローダイヤル:03−5777−8600
展覧会公式サイト:http://kasuga2017.jp/

※写真無断転載禁

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